今日はレディースデイでしたので、「十三人の刺客」を見てきました。


「七人の侍」+「忠臣蔵」のような、伝統的時代劇エンターテイメント、な映画でした。
ものすごーく真面目な登場人物、キャラクター順々に揃っていく活劇のなか、吾郎さんと伊勢谷さんだけがちょいと異彩を放っておりました。

吾郎さんの殿様がよくって、ですね。
冷血な私にとっては、非道な姿も「うーん、まあ、暴虐の殿としてはこれくらいやっちゃうかー」なぞと考えてしまったわけなんですが、なんつーても、なんでしょうね、あの感じ。(音はゾクゾクきますがね・・・あまりこう、直接的表現はない)
ちょっと、ピースにも通じるものがあるんですが・・・。
悪行に酔いしれてもいないし、暗愚でもないし、人格破綻者でもないんですね。

他の人物たちがある意味、すごい「わかりやすい」なか、確かにこの殿様のアンダーグラウンド、とかの想像を逞しくさせる。
吾郎さんの演技がそれを誘発するのです。
饒舌でもなく小難しくもなく大袈裟でもなく存在で、ですから流石じゃないですかね。

この殿様はとても冴えてるし、怜悧だし、なんだか武芸も学問もなんでも出来まくりそうなんですね・・・。
でも、このひとは、多分、家斉の二十六番目、という感じで。
きっと、えらいことになってる大奥育ち、でもあり。
多分、生まれた時から物凄い修羅の世界を知っているであろう、とも思えるわけで。
しかし、この殿様は運良く五体満足に健康的に育ち、大奥から出られて。
あまり大きくないとはいえ明石藩という一国一城の主になれて。
しかも来年には老中に・・という身分役職であれば、うまく才覚を活かすひとであれば、将軍なんざ目じゃないくらいに辣腕を振るえるかもしれないわけで。
さらに、頭がよく度胸があれば、国を救える立場でもあった、というわけなんよね。深読みすれば。

けれど、殿様といったら、現代のどうしようもない使えない頭でっかちの劇場型犯罪を犯す若者みたいな人ですから。
自己意識過剰、周りを挑発しまくっている。
明石藩のもともとの後継者を押しのけて、無理矢理幕府が据え置いた若殿の劇場型自殺。
吾郎さんはこの殿を「ダースベーダー」に例えていたけれど、私はかの西周の傾国の美女「褒?」を思い出す。
彼女の一笑のために国が滅んだ、というアレ。
まあ、殿様の場合は自分が動き回って笑いたかった、っていうもんですけれども、しかも別に国は滅んでないし。(笑)

それにしたって、この殿様への刺客、ここまで大掛かりにしなくったって、かの藤沢先生原作のシリーズなんかだと、伝説の剣法なんぞを使った遣い手が暗躍して城内にて暗殺して終わり、な感じがするんですけどもね・・・。


という、なんとも殿様中心の見方をしてしまった、映画なのでした。


現実の、江戸時代の使えない殿様は、もっとひどいことになってそうなんですけどもね・・・。(暗愚とかの場合が多いけども)


映像としてはラストの斬り合いは凄かったです、なんだかんだいって。
CG使ってあるところは笑ってしまいましたが(やっぱり、黒澤映画とか思い出すとね・・・)、殺陣は凄まじいですね。
今、テレビでこういうのを大々的にしないですもんねえ・・・。


監督の、目、眼、瞳の映し方のこだわりが随所にありました。

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