えー、ネタバレでがっつり語りたいと思います。

はじめに断っておきますと(笑)、原作読まず、映画も1度しか見ておりません・・・。
あとで修正しにくるかもしれません、あしからず。

さて。

「武士の一分」。

まずは、誤解を怖れずに書きますと
「木村拓哉は木村拓哉」なのでした。

愛されましたね、木村さんは銀幕に。
「山田組」に。
ため息をつきつつ思いました。
そして、いかな場にあろうとも
「木村拓哉」。
銀幕のスタアたる必要条件、であります。

作品は山田洋次三部作のなかでも、実に真っ直ぐで情熱的でシンプル。
これは難しいと、思います。
実に難しい。
この作品を成り立たせるのに、いかに新之丞の存在が難しいか。
・・・やっぱり、「木村拓哉」しかおりません。

そして、木村さんの演技は実に木村さん、なのでした。
私は「見たことのない」木村さんに会うために見に行くのかな、という感じだったのですが。
昨夜の慎吾ちゃんの言っていたように「見たことのある木村くんがちらっちらっと出てくるのが嬉しい」。
まさにそんな感じでした。

妻や中間に軽口を言う時に、先に唇をゆがませて笑ってしまう顔。
愚直なまでに真っ直ぐな心情そのままのキラキラした瞳。
権威や形式にちょっととぼけて見せる表情。
恥ずかしがって目を逸らし気味にして話す感じ。
「めんどくせぇ」と言い放つオチャメさ。
子供に見せる笑顔。

これはファンゆえかな〜、と思って隣を窺うと、初老の男性は目尻の皺を寄せて微笑んで観ていられた。
新之丞の箸の上げ下げに、「あっ」と小さく手を震わせてハラハラ見ていられた年配の女性がいられた。
そんな演技が、実に実にナチュラル、なのだ。
メイクと一緒で、この自然さのいかに難しいことか。

背筋の真っ直ぐ伸びた姿勢、生まれながらの武家に見える所作が
きっちり演じられたうえでのこと。
それを忘れるくらいの自然さ。
すごいことだ、と思う。
(前半、あれれ・・・と思ったところがあったけど、それでもたいしたものです。と、甘いファン)

真田さん、永瀬さんと単純に比較すると、「山田監督の」とつく映画の主演俳優、武士を演じた、といった感じだったおふたりに対して、今回の木村さんはそこを超えてたような気がする。
・・・ああ、修正しますと、真田さんの場合は、作品そのものになってらっしゃったような気がする。
実にチャーミングな彼と山田組とのコラボレーション、といった風に見える、木村さんの輝きたるや、やっぱりすごいものがある。

それは、綿密な演出と作画の上で成り立っている。

こまごまと重ねられるシーンとシンプルな流れ。
新之丞を中心としての人物描写。
山田監督は、こういうのが実に巧い。
夫婦の描写については、あちこちに感想が述べられているし、つけ加えるところがないくらいだけれども、
新之丞と上役や同僚のシーンなど、実に巧い。
お殿様のお目どおりのくだりなんて最高で、あれは実にラストのラストの伏線、になってると思う。

年長同僚?と木村さんのあの表情と間。
お殿さまのすっとぼけぶり(笑)
一緒に観た母が
「あの時ってすでに新之丞の処遇って決まってたんだよね・・・・」
「うん(笑)。」

後半の、光を失くしてからの新之丞の激しさと若さ。
あれも山田演出に裏打ちされた演技なのだけど、ひとには出せない色と味がある。
あの涙の大きさ、よ。

緒形拳さんとのシーンはとても迫力があった。
武道者の立ち合い、といった感があり、時代劇の殺陣とはちがう新鮮さを感じた。
のちの果し合いよりも、ずっと迫力ある道場のシーン。
三津五郎さんの立ち居振る舞いは、やはりお芝居、歌舞伎の感じがした。
身分ある武士の振る舞いとしてピッタリ、だったのだろうけれど、あの太刀捌きが実は有名道場ではあっても実用向きではない、ということの表れなのかもしれない、と思った。
相手を盲人、と思った緩みでもあるのだけれど。

「武士の一分」。
それは新之丞の一分、を描いた作品でもあり。
非道を働いた島田の一分、でもあり。
実は一枚も二枚も上なんじゃないか、という(笑)お上の一分、でもあり。
「武士の妻の一分」
「中間の一分」
を描いた作品でもあるのかな、と。

「武士の一分の木村拓哉」というだけでなく
「木村拓哉の武士の一分」な、そんな作品でもある、と思う。

眼千両、涙の美しい男優。
そんな魅力のあるスタアの銀幕。

「武士の一分」という映画。

チャーミング、な映画です。
実に私自身、女性として見てしまった、映画です。

MAYUKOさん。
ほんとに
愛おしい、映画です。

コメント

セロリ
セロリ
2006年12月25日0:22

さらささま☆
こんばんは。セロリです。

今日4回目新之丞さまに会ってきました。
私は具体的な言葉で感想を書けないので(〜な感じが多くて)
さらささんの感想
そうなの そうなの と納得しながら読ませてもらいました。

見えている眼 見えない眼 涙は美しすぎます。
本当に愛しい映画です。

勝手ながらリンクさせていただきます。
よろしくお願いします。

MAYUKO
MAYUKO
2006年12月25日8:48

さらささん、もうね、
日記読んで、涙でてきちゃいましたよ。
そうでしょ〜「愛が溢れている」映画なのよ。

無駄な映像や、無駄な登場人物が一人も居ない。
すべての人物が、エッセンスになっている映画です。

いろんなスパイスが混じりあって、絶妙な味を醸し出す、
さすが「山田洋次」という映画です。

そして、その山田さんに惚れられたというね。

まさしく「木村拓哉冥利」ってやつでございます。

さらさ
さらさ
2006年12月25日22:29

おふたりにお返事なのです☆

セロリさん
コメント&リンクありがとうございます。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
4回目ですか〜。
わかります、私もいっぱい見たいシーンがまだまだ、ありますもの。
見えている眼 見えない眼・・・
美しいだけじゃなくてね、ほんとに怖い眼でもあったんですよね、それにはびっくりしました。
すごいですよね、ほんとに。

MAYUKOさん
山田監督の映画は、だから、大好きなんですよ〜。
役者さんを愛してその人のよさを引き出すその味。
笹野さんはじめ「山田組」も役者さんたちもそんな空気があるからこそ、「旦那さま」を温かく迎えて愛してくださる。
木村さんが「気持ちのよい男」だから、だと思います。
映画現場のひとには、とても愛されるひとだと思います。
そして、じっくりと時間をかけて取り組めた、木村さんが実に羨ましい。
ちょっとヤキモチを妬いたことを白状します。(笑)

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