単行本 米村 圭伍 新潮社 2004/08/19 ¥1,890
豊後温水藩の蜜姫は、母である藩主の国許の側室・甲府御前のもと、のびのびと育った評判の暴れ姫。ある日、お国入りした父から、自らの嫁入りの話と嫁入り先の風見藩との合併案を打ち明けられる。その矢先に、父が何者かに襲われて傷を負ってしまう。
藩の合併案のみならず、将軍家の弱味を握っていたから狙われたという。
蜜姫は合併を阻止すべく刺客を放った八代将軍・吉宗と闘うため、そして結婚相手を見定めるため、武田忍びの忍び猫・タマを供に出奔・・・!
時代小説には、「姫君小説」なるジャンルがあるらしい。
米村圭伍さんという作家は、ほかに「退屈姫君伝」なども書かれている。どうやら、今までの著作とリンクしている部分が多いようだが、この一作だけ読んでも、充分楽しめる。
時は、八代将軍吉宗の時代、だけど主人公蜜姫も、生まれの豊後温水藩も、出てくる風見藩も架空(フィクション)。
軽妙な文章と現代的なヒロイン。気軽に読み進めるが、その破天荒っぷりにこまごまと時代考証がなされていて、面白い。
合併を目論む小藩と、将軍の一大スキャンダル・天下の暴れん坊将軍の隠し子「天一坊」騒動、名奉行大岡越前、吉宗の最大の政敵尾張松平家との暗闘・・・・。
なのに、登場人物が雲をつくくらいの大男の海賊だったり、和歌のうまい蜜姫の母上だったり、武田忍びが仕込んだ最強の忍び猫・タマだったり、色男な忍者だったり、小藩の冷や飯食いの侍だったり、とキャラクターも個性満載。
なかでも、吉宗のキャラクターは面白かったし、天一坊のくだりは、ジーン、とさせられる。
最強のキャラは、蜜姫の母、甲府御前だ。(笑)
これは、新聞連載小説だったみたいですね。
テンポがいいし、段落分けがはっきりしていたので、なるほど、と。
「退屈姫君伝」は読んでいて、どうかな〜?とは思いましたが、こちらは気に入りました。他の著作も機会があれば読んでみたいですな。
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